パイルナビクラウドとは?V・P・S・W・Hの違いと杭打設の品質管理・省力化を解説
更新日:11 分前

杭工事では、杭芯位置のずれや鉛直精度、打設位置の誘導など、さまざまな施工管理が必要です。
特に、杭の建込みや打設中には、測量担当者が計測した結果を重機オペレーターへ伝達し、杭の位置や傾斜を調整する場面があります。
施工管理者の皆さんは、次のような課題を感じたことはないでしょうか。
杭芯位置のずれや鉛直精度を施工中に確認したい
杭打機を設計杭芯位置まで効率的に誘導したい
測量担当者と重機オペレーターの情報伝達を省力化したい
鋼矢板やH形鋼杭の打設精度を管理したい
斜杭の傾斜角や方位角を正確に確認したい
計測データをクラウドで共有し、施工記録の作成を効率化したい
こうした課題に対して、TKnetが注目するのが、計測ネットサービス株式会社の**杭打設管理システム「パイルナビクラウド」**です。
パイルナビクラウドは、トータルステーション(TS)やGNSSなどを活用し、杭の位置・傾斜の計測や杭打機の誘導を支援するシステムです。
現在、メーカーでは用途に応じてV・P・S・W・Hの5種類が紹介されています。
また、NETIS登録番号はKT-220168-VEとして案内されています。
ただし、5種類のシステムは、それぞれ管理対象や計測方法が異なります。
「パイルナビクラウドを導入すれば、杭工事の品質管理をすべて行える」というわけではありません。
今回は、5種類の特徴と使い分け、導入時の注意点、技術提案への活用方法を施工管理者向けに解説します。
1.パイルナビクラウドとは?
杭打設の位置・傾斜管理と重機誘導を支援するICT技術
パイルナビクラウドは、杭打設時の計測データを取得し、設計値と実測値の差を画面で確認できる施工管理支援システムです。
従来の杭工事では、測量担当者が杭の位置や傾斜を確認し、オペレーターへ結果を伝える作業が必要になる場合があります。
パイルナビクラウドでは、対応する計測機器と車載モニターを組み合わせることで、施工中の計測情報をオペレーターが確認できるようになります。
また、計測データをクラウドで閲覧・共有できる仕組みも用意されています。
製品概要
項目 | 内容 |
技術名称 | 杭打設管理システム「パイルナビクラウド」 |
メーカー | 計測ネットサービス株式会社 |
NETIS登録番号 | KT-220168-VE |
主な計測技術 | トータルステーション・GNSSなど |
主な管理対象 | 杭芯位置、偏心、傾斜、重機誘導など |
情報表示 | 計測PC、車載モニターなど |
クラウド | K-Cloud対応 |
主なシステム | V・P・S・W・H |
※機能、対応工法、計測方法はシステムごとに異なります。
2.パイルナビクラウドの5種類を比較
パイルナビクラウドは、現場で管理したい内容に応じてシステムを選ぶことが重要です。
システム | 主な用途 | 管理・誘導する内容 | 主な計測方法 |
V | 鉛直杭の打設管理 | 杭芯位置・偏心・傾斜 | ノンプリズムTS |
P | 杭打機の位置誘導 | 設計杭芯との位置関係・重機の向き | GNSS |
S | 鋼矢板の打設管理 | 法線の出入り・鉛直 | ノンプリズムTS |
W | 斜杭の打設管理 | 傾斜角・方位角 | ノンプリズムTS |
H | H形鋼杭の打設管理 | 視準方向の位置ずれ・倒れ | ノンプリズムTS |
TKnetが考える選び方
杭芯の偏心や鉛直精度を管理したい → パイルナビクラウド-V
杭打機を設計杭芯へ誘導したい → パイルナビクラウド-P
鋼矢板の法線や鉛直を管理したい → パイルナビクラウド-S
斜杭の傾斜角と方位角を管理したい → パイルナビクラウド-W
H形鋼杭の打設精度を管理したい → パイルナビクラウド-H
このように、同じパイルナビクラウドでも、管理する対象は異なります。
次に、それぞれの特徴を紹介します。
3.パイルナビクラウド-V|杭芯位置と鉛直精度を管理

杭の偏心と傾斜を施工中に確認
パイルナビクラウド-Vは、杭芯位置や鉛直精度の管理を支援するシステムです。
ノンプリズム計測機能を備えたトータルステーションを使用し、杭の外径の上下2点ずつを計測することで、杭芯位置や傾斜を算出します。
あらかじめ登録した設計値と実測値との差を、計測PCや車載モニターなどに表示します。
現場で期待できる効果
① 杭芯位置のずれを確認しやすい
設計杭芯と実測杭芯との差を確認することで、杭の建込みや打設時の位置調整を支援します。
② 鉛直精度を施工中に確認できる
杭の傾斜を画面で確認し、管理値を超えた場合には警告表示などによって知らせます。
③ オペレーターへの情報伝達を効率化
車載モニターを活用することで、計測結果をオペレーターが確認できます。
④ 計測データを保存・共有できる
K-Cloudを活用することで、計測データの閲覧や帳票出力が可能です。
TKnetおすすめの活用現場
既製コンクリート杭の打設工事
鋼管杭の打設工事
場所打ち杭の施工
杭芯位置や鉛直精度の確認回数が多い現場
杭本数が多く、測量作業の省力化を図りたい現場
導入時の注意点
パイルナビクラウド-Vは、トータルステーションから計測対象の杭を視準できる必要があります。
また、メーカーでは、直径200mm以下の細い杭については計測できない場合があると案内しています。
さらに、杭の深度管理はオプション機能として紹介されています。
標準の位置・傾斜管理と、オプションの深度管理を混同しないことが重要です。
4.パイルナビクラウド-P|杭打機を設計杭芯へ誘導

GNSSを利用した重機ナビゲーション
パイルナビクラウド-Pは、GNSSを使用して杭打機を設計杭芯位置へ誘導するシステムです。
設計杭芯座標と重機の位置関係を車載モニターなどに表示し、オペレーターの操作を支援します。
Vが杭そのものの位置・傾斜を管理するシステムであるのに対し、Pは杭打機を所定の位置へ誘導することが中心です。
現場で期待できる効果
① 杭打機の位置合わせを支援
設計杭芯座標との位置関係を画面で確認しながら、重機を誘導できます。
② 測量担当者との情報伝達を効率化
従来の人による位置誘導や目測を補助し、重機の位置合わせを効率化できます。
③ 施工済み・未施工の杭を把握
メーカーでは、施工済み・未施工の状態を画面に表示する機能も紹介されています。
TKnetおすすめの活用現場
杭本数が多い基礎工事
杭打機の移動・位置合わせを繰り返す現場
三点式杭打機を使用する現場
地盤改良杭の施工
重機誘導作業を効率化したい現場
導入時の注意点
GNSSを使用するため、衛星を十分に受信できる環境が必要です。
メーカーの基本仕様では、上空が開けており、GNSS衛星を8個受信可能な現場が条件として案内されています。
建物に囲まれた場所や高架橋下などでは、受信状況を事前に確認する必要があります。
また、Pは重機の位置誘導が中心であり、杭の鉛直精度や支持層への到達をすべて管理するものではありません。
5.パイルナビクラウド-S|鋼矢板の法線と鉛直を管理

シートパイルの打設精度を確認
パイルナビクラウド-Sは、鋼矢板(シートパイル)の打設管理を支援するシステムです。
ノンプリズムトータルステーションを使用し、鋼矢板の上下2点を計測することで、法線方向の出入りや鉛直を管理します。
設計値と実測値との差を、数値や画面で確認できます。
現場で期待できる効果
① 鋼矢板の法線管理を支援
鋼矢板の打設位置が設計法線からずれていないか確認できます。
② 鉛直精度の管理を支援
打設中の傾きを把握し、必要な修正を検討できます。
③ 計測結果を共有できる
車載モニターやK-Cloudを利用し、計測情報を確認できます。
TKnetおすすめの活用現場
河川・港湾の護岸工事
橋梁下部工の土留め工事
鋼矢板を使用する仮設工事
法線管理が重要な連続鋼矢板の施工
導入時の注意点
鋼矢板は形状や施工方法が杭とは異なります。
計測対象の視準条件や打設方法を確認し、対象となる鋼矢板に適用できるかメーカーへ確認しましょう。
また、法線・鉛直の計測と、継手の健全性や根入れ長さの品質管理は別の項目です。
6.パイルナビクラウド-W|斜杭の傾斜角・方位角を管理

トータルステーション1台で斜杭を計測
パイルナビクラウド-Wは、斜杭の施工管理を支援するシステムです。
2025年3月に登場したシステムで、ノンプリズムトータルステーション1台を使用し、杭の外径の上下2点ずつを計測します。
これにより、斜杭の傾斜角と方位角を算出し、設計値との差を確認できます。
現場で期待できる効果
① 傾斜角を確認できる
設計した傾斜角に対して、実際の杭の傾きが適切か確認できます。
② 方位角を確認できる
杭がどの方向へ傾いているかを把握し、設計方向との違いを確認できます。
③ 測量作業の省力化を支援
トータルステーション1台で計測する方式により、斜杭の計測作業の省力化が期待できます。
TKnetおすすめの活用現場
斜杭を使用する基礎工事
斜杭の傾斜角・方位角の管理が重要な現場
斜杭の建込み時に測量負担が大きい現場
ロータリーパーカッションドリルなどを使用する施工
導入時の注意点
メーカーでは、細い杭や打設速度によっては計測できない場合があると案内しています。
また、トータルステーションから杭を視準できる必要があります。
斜杭の計測では、傾斜角だけでなく方位角も管理できるかが重要です。
TKnetでは、斜杭の施工管理に特化した記事も公開しています。
7.パイルナビクラウド-H|H形鋼杭の位置と倒れを管理

2025年4月に登場したH形鋼杭向けシステム
パイルナビクラウド-Hは、H形鋼杭の打設管理を支援するシステムです。
2025年4月に販売が開始されました。
ノンプリズムトータルステーションを使用し、H形鋼の側面の上下1点ずつを計測することで、視準方向の位置のずれや倒れを算出します。
現場で期待できる効果
① H形鋼杭の位置ずれを確認
設計値と実測値との差を、数値や画面で確認できます。
② H形鋼杭の倒れを管理
打設中の倒れを確認し、施工精度の管理を支援します。
③ 計測データを記録・共有
計測データの一覧表示やCSV出力、K-Cloudからのデータ取得に対応しています。
TKnetおすすめの活用現場
山留め工事
土留め工事
仮設桟橋のH形鋼杭施工
H形鋼杭の打設精度を管理したい現場
導入時の注意点
メーカーでは、トータルステーションを計測対象と正対する位置に設置する必要があると案内しています。
また、管理できるのは視準方向の位置ずれと倒れです。
H形鋼杭の全方向の位置・姿勢を無条件で計測できるわけではありません。
打設速度によって計測できない場合もあるため、事前確認が必要です。
8.K-Cloudによる施工記録の共有・トレーサビリティ向上

パイルナビクラウドの特徴の一つが、クラウドサービス「K-Cloud」との連携です。
対応するシステムでは、計測データをクラウド上で閲覧し、施工状況を確認できます。
また、帳票出力やCSVデータの取得にも対応しています。
現場で期待できる効果
① 施工状況を離れた場所から確認
現場事務所などから計測データを確認し、施工状況を把握できます。
② 計測記録の整理を効率化
紙への転記や手入力を減らし、計測記録の整理を支援します。
③ 関係者間で情報を共有
元請、杭施工会社、測量担当者などが、同じ計測情報を確認できる環境づくりに役立ちます。
④ 品質管理の追跡可能性を高める
杭番号などと計測データを適切に関連付けて管理することで、施工後の確認に役立ちます。
注意点|すべての施工記録を自動作成するわけではない
K-Cloudは、対応する計測データの共有・保存を支援する仕組みです。
一方、杭工事では、支持層の確認、杭材の品質、継手、コンクリート打設など、別途管理が必要な項目があります。
そのため、K-Cloudだけで杭工事全体の品質管理帳票がすべて完成するわけではありません。
計測データの管理と、工事全体の品質管理を分けて考えることが重要です。
9.パイルナビクラウド導入前に確認したい5つのポイント
① 管理したい項目とシステムが合っているか
杭芯位置、鉛直精度、重機誘導、斜杭、鋼矢板、H形鋼杭など、管理したい内容を整理します。
特に、VとPは目的が異なります。
杭の位置・傾斜を管理したい場合はV、杭打機を設計位置へ誘導したい場合はPが候補になります。
② 計測機器を設置できるか
トータルステーションを使用するシステムでは、計測対象を視準できる位置に機器を設置する必要があります。
重機による遮蔽や振動、作業スペースなどを確認しましょう。
③ GNSSの受信環境に問題はないか
PではGNSSを使用するため、衛星を受信できる環境が必要です。
高架橋下や建物に囲まれた現場などでは、導入前に確認が必要です。
④ 電源・通信環境を確保できるか
計測PCやモニター、クラウド接続などに必要な電源・通信環境を確認します。
特に、メーカーが指定する機器構成や通信条件を事前に確認することが重要です。
⑤ 導入費用と省力化効果を比較する
ICT機器の導入には、レンタル費用や設置費用、機器準備などの費用が発生する場合があります。
一方、測量作業の省力化や位置確認作業の効率化が期待できます。
杭本数、施工期間、測量人員、現場条件を踏まえ、導入効果を検討しましょう。
10.TKnetが考えるパイルナビクラウドの採用ポイント
TKnetでは、パイルナビクラウドを、杭工事の施工精度向上と施工管理の省力化を両立したい現場で検討したい技術と評価します。
評価項目 | TKnetの着目ポイント |
品質 | 杭芯位置・傾斜などの計測管理を強化 |
工程 | 位置確認や測量結果の伝達を効率化 |
安全 | 重機周辺での計測作業の負担軽減を検討 |
環境 | 直接的な環境改善効果は現場条件により評価 |
コスト | 測量作業の省力化と導入費用を比較 |
※上記はTKnet独自の選定観点です。改善効果を保証するものではありません。
技術提案・創意工夫への活用
パイルナビクラウドを技術提案に活用する場合は、現場課題と採用システムを明確にすることが重要です。
例えば、杭芯位置や鉛直精度の管理強化を目的とする場合は、パイルナビクラウド-Vを中心に検討します。
技術提案文の参考例
「杭打設工事における杭芯位置および鉛直精度の管理強化を目的として、NETIS登録技術『パイルナビクラウド-V』を採用する。
本技術は、ノンプリズムトータルステーションを使用して杭の外径を計測し、設計値と実測値との差を施工中に表示するシステムである。
計測結果を車載モニターで確認できる環境を整えることで、杭の位置調整を支援し、施工精度の確保を図る。
また、K-Cloudを活用した計測データの保存・共有により、品質管理記録の整理と関係者間の情報共有の効率化を目指す。」
※上記は参考例です。採用するシステム、対象工法、計測条件、発注者の評価要領に合わせて修正してください。
11.パイルナビクラウドの技術提案資料を活用しよう
パイルナビクラウドは、杭芯位置や傾斜の管理、重機誘導、斜杭の角度管理など、現場課題に応じて選べるICT技術です。
しかし、実際の技術提案では、現場課題と導入効果を分かりやすく整理する必要があります。
TKnetでは、パイルナビクラウドに関する技術提案資料を公開しています。
杭打設の施工精度向上や測量作業の省力化を技術提案として検討したい方は、ぜひご活用ください。
また、NETIS技術を比較したい方は、TKnetのNETIS一覧表もご覧ください。
12.杭工事の品質管理をもっと詳しく知りたい方へ
パイルナビクラウドは、杭の位置や傾斜などの計測管理を支援する技術です。
しかし、杭工事では、打設深度、支持層、杭体品質、施工記録なども適切に管理する必要があります。
杭工事全体の品質管理を整理したい方は、TKnetの総合記事をご覧ください。
また、斜杭の施工管理を詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
まとめ|パイルナビクラウドは現場課題に合わせて選ぼう
パイルナビクラウドは、杭打設の施工精度向上と施工管理の省力化を支援するICT技術です。
現在、メーカーではV・P・S・W・Hの5種類が紹介されています。
V:杭芯位置・偏心・鉛直精度の管理
P:杭打機の設計杭芯位置への誘導
S:鋼矢板の法線・鉛直管理
W:斜杭の傾斜角・方位角管理
H:H形鋼杭の位置ずれ・倒れの管理
それぞれのシステムには、計測方法や適用条件の違いがあります。
そのため、導入時には、杭種や施工方法、計測環境、管理したい項目を整理することが重要です。
また、パイルナビクラウドは杭工事全体の品質管理をすべて代替するものではありません。
杭芯・傾斜などの計測管理をICTで効率化し、支持層や杭体品質などは適切な施工管理方法と組み合わせる。
これが、パイルナビクラウドを有効活用するためのポイントです。
TKnetでは、これからも施工管理者が現場条件に合ったICT・NETIS技術を選べるよう、技術情報を現場目線で紹介していきます。

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